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人に人としての尊厳があるように、川にも川としての尊厳がある。人と川がお互いを尊重する関係とは?を考えています。
水力発電よもやま話
2015-05-09 Sat 07:42
第4話 建物も○○も古い?

湯沢発電所が完成したのは大正11年、今から93年前だ。この古い建物の「構造書もない、強度もわからない、補強もしていない」状態で64年間も管理していた東電は、崩落事故後、「この冬一度も雪掘りをしていなかった」と説明した。雪国では信じられない「え゛~~?」という出来事。(古い我が家は年内に3回、年が明けて5回も雪掘りをしたのに…)でも、古いのは発電所の建物だけでなく、中の発電機材もびっくりの歴史的産物なのだ。湯沢発電所のペルトン式水車は縦に回るタイプで、水量が少なくても落差が大きい条件で有効だ。JR信濃川発電所などは水量が多く落差の小さい条件で有効なフランシス式で、コマのように横向きに回る水車。日本の水力発電の黎明期にはペルトン式が多く導入され、その後フランシス式が増えた。

パネル説明G

ペルトン水車G

写真は湯沢発電所を見学したときに職員がパネル説明しているところと、日本初の水力発電で使われたペルトン水車(蹴上第一発電所明治24年~明治45年・琵琶湖疏水記念館所蔵)だ。ノズルから水を受けるバケットの形や数も同じで水車の大きさも似ている。発電機材は初めは欧米(エジソンGE社)から輸入し、それを真似て日本企業(東芝)が製造した。湯沢発電所が計画されたのは明治40年と古いためにペルトン水車を使う都合上、落差を稼げる湯沢側へ清津川の水を流域変更したのでは?と私は考えている。反対に考えれば、フランシス水車を使うなら流域を変更しなくて良かったのではないか?湯沢発電所が完成したのは、世界遺産の富岡製糸場が最盛期のころだ。古いものをちゃんと管理していれば、もう少しで「現在まで使用している近代化産業遺産」として世界遺産申請ができたかもしれない…。(笑)

さて古いのはそれだけじゃない…東電の事故説明を聞いていてびっくりしたのは、「変圧器のPCBが漏れた」という部分だ。カネミ油症事件で有名になったポリ塩化ビフェニルは毒性が強く、その後製造禁止になり、所有しているものもPCB特措法で厳しく管理している。漏れ出すと環境や健康に影響が大きいので、速やかに代替して適切に処理するのが常識と思っていた。日本人は真面目で、「節電!」と言われれば、すぐにLED電球に取り換え、省エネ家電に買い替え、自販機もハイブリッドになり…新しい技術に替えて電力消費量は減ってきている。その電力を作っている東電が、50年前のPCBを絶縁体にした変圧器を未だに使っているなんて…古くてやっかいなのは、会社の体質だったのか…「流失したPCBは魚野川に流入していない」と東電は説明するが、福島第一原発でも何年もたってから「やっぱり汚染水洩れていました」って前例があるので 念のため私は用心することにしよう。
(妻有新聞 5月8日掲載)
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水力発電よもやま話
2015-05-04 Mon 07:49
第3話 川が凍える

自然現象は謙虚に注意深く観察しないといけない。年寄りの言葉で「なでがついて」と言うのはたいてい全層雪崩を意味していて、「ワヤが出て」は表層雪崩だ。同じ雪崩でも区別していたのは、対処法が違うからで、なでは雪の重みを注意し、ワヤは窒息の危険を注意する。昔の人は自然現象がさまざまな形態で起ることを知っていて軽視していなかった。何もかも科学や数字で片付ける今の人は、自然を一面的にしか見ていないのではないだろうか。
この冬の雪は12月からドカンと降った。中旬は気温が低く、サラサラの雪で、急斜面に積もりきれない雪が、狭い峡谷の両岸からグラニュー糖のように絶え間なく川に注ぎ込んだ。水量が少ないので川は写真のような流動食状態になった。

スノージャム


スノージャムというらしい。水が多く広い川ではこんなことは起らないし、気温が高い時の雪ではこうならない。豪雪地の峡谷を流れ、発電取水で減水が激しい川で、低温時に起きやすい現象だ。写真は12月18日の清津川のもので、川の半分くらいが白くなることはよくあるが、全体がジャム化するのは珍しい。見る見るうちに、流れのゆるいところではジャム状の雪が詰まり始めていた。この時に中津川上流の雑魚川でも同じことが起っていた。雑魚川は上流で東電切明発電所が殆どの水を取水して減水し、更に下流から中津川第一発電所のために追加取水する仕組みだ。川にとっては、極寒の中、上着だけでなく肌着まではぎ取られるような取水方法で、凍えてジャム化するのも無理はない。自らの取水で川がどうなっているかも観察せず、お構いなしに取り込むのは水利権者の欲で、謙虚さの微塵もない。取り込んだスノージャムで導水路が詰まり、溢れた水が土砂崩れを誘発、国道が埋まって奥の集落が孤立した。水力発電では、導水路にゴミや異物が入ることは致命的で、それを避けるために取水口には柵がある。ここを通った水は一旦沈砂池に入り、そこから溢れた上水だけを導水路に引く構造になっている。東電の説明では、切明発電所の作業のために、沈砂池を使わず迂回させて、柵のないルートで導水したらしい。妻有人なら流れのゆるい流雪溝に大量に雪を入れると、詰まって溢れることくらい誰でも知っている。ジャム化したら水力発電には不向きだから直ちに取水を停止するしかない。発電のプロらしくない素人くさい事故だなと呆れていると、また一か月もたたないうちに自然を甘く見ていたと思わせる事故が起った。湯沢発電所屋根崩落事故だ。
(妻有新聞 5月1日掲載)
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水力発電よもやま話
2015-04-19 Sun 14:13
第2話 清津川の力

毎年、冬の清津川は雪崩で閉塞する。両岸が切り立った峡谷で水量が少ないので、雪崩で堰止まると1時間以上、流れが止まる。川底の石が丸見えになり、上に雪が積もったり、日に干されカラカラに乾いたりする。その後、堰が切れると一気に溜まった水が出て、急激に水位が上がり、周辺の土砂や木が大きな雪の塊と一緒に凄い勢いで流れる。雪泥流と言うそうで、川の周辺は危険なので近寄れない。

河道閉塞20090119B
(河道閉塞で川底の石が丸見え・・・2009年1月)


雪泥流20090119B
(その後の恐ろしいような雪泥流)


この冬は12月から大雪で粘りけのある雪質だったので、雪泥流を心配していた。案の定、早くから度々雪崩で川は閉塞し、1月7日にはかなり長い時間堰止まる現象が起きた。堰止まる時間が長いほどその後の雪泥流は大きくなる。この時の出水は集落の人が「清津川に土石流が出た」というほどで、大木や石も流れ出た。被害がなくてよかった。?…と思ったら国交省の流量観測施設が壊れた。実はこの施設が壊れたのは初めてではなく3回目だ。河川の維持流量を決めるときの項目で、「河川管理施設の保護」というのがあって、これらの施設が壊れないための流量を確保することになっている。当然、河川法の話だから国交省はよくご存じだが、彼らはこれを無視しているのだ。前回も「流量が少ないから壊れた」と指摘しているのに知らん顔でいる。自費でなく血税で修理するから何度壊れても痛くも痒くもない。今回の雪泥流はこの施設の高さや、周りの雪の上に残っている泥から見ると、川幅の広いところでたぶん2mくらい水位が上がったのでは?と思う。少し下流には人家がある。この調子でいけば、人や家屋に被害が及ぶまで、彼らは何もしないだろう。
そんな中、東電湯沢発電所屋根崩落事故が1月10日に起り、取水停止となった。今まで清津川は冬に全量放流になったことがなかったので、初めて見る冬の自然流量は、水神様降臨!といった感があった。こんなに水が多いのか・・・
そして、それ以後、長時間の閉塞は起きなかった。雪崩があっても堰止まらないのだ。これが清津川の実力なんだ!
清津川の河床は、一昨年9月の台風で大量の石が上流から流れ出たために、以前より高くなっていて、今後も更に高くなることが予想される。同規模の閉塞でも今までより水位は上がるので要注意だ。国立公園第一種特別地域で、道すらないところの砂利を取り除くことは無理で、雪泥流の被害を減らすには、冬の間、清津川の流量を増やすことしか対策はないと私は思っている。
(4月17日妻有新聞掲載)
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「蛭」に血を吸われる
2015-04-11 Sat 08:54
このブログを材料にして地元紙に連載を書くことになりました。
掲載されたものから UPします。内容はブログとダブったりリンクしたりですが、水問題を誰にでもわかるよう噛み砕いて書くように努力します。



第一話 「蛭」に血を吸われる


hiruのコピー


蛭に血を吸われたことがある人には分かりやすいかもしれない。

蛭が吸血できなくなった皮膚から口を離し、ビヨ~ンと首を伸ばして、より心臓に近いところに食らいつこうとしている。東電石打発電所の取水口変更申請の説明を聞いてから、私の頭の中ではこの蛭の絵が消えなくなった。この蛭は頭が2つあって、1つは魚野川から吸って、2つ目は湯沢発電所の排水口から出る清津川の水を吸っていたが、湯沢発電所が崩壊したので吸えなくなった。そこでビヨ~ンと湯沢発電所を迂回して清津川まで首を伸ばし、上流の清津川発電所の排水口に食らいつくというのだ。更に、恐ろしきは、もし第3の頭があったら、清津川の三俣堰堤からも吸血したいそうだ。そもそも魚野川に住んでいる蛭がどうして山の向こうの清津川まで首を伸ばすんだろう?この蛭が生まれたのは大正15年で湯沢発電所より4年後だから、清津川に吸いつきたいなら、新参者として「清津川からも吸血したい」と申請して、下流の同意を求めるのが礼儀でしょ?と普通人の私は思うのだが、水利権の世界では礼儀もへったくれもなく「今までと変わりない」という水収支で合法ならOKと許可するらしい。つまり、権利を持つ者は厚顔なほど得なので、1月10日の崩落事故の被害状況や原因究明も「未だ瓦礫の下で分からない」と言いながら東電は2月6日に申請書を提出した。まったく節操がない。その申請を受理した国交省は、(多分、既存の施設を使うため新たな部分がないから)さっさと審査を終え、県知事に意見聴取をし、県はこれまたほぼ検討なく、12日には関係市町に意見を求めた。この間、土日祝祭日を除くと、公官庁の実労日はたったの3日間!というスピード業務である。とかく時間がかかるお役所仕事にしては見事な連携ぶりだ。そして県は通常、役所ではあり得ない年度末ギリギリの3月30日に東電のためにこの申請を許可に導く臨時の清津川・魚野川流域水環境検討協議会を招集した。そんなこんなの人間社会の見っとも無いドタバタを笑うかのように、清津川は雪の中を悠々と流れている。この3か月間、自然流量に戻った川の実力は素晴らしかった。(妻有新聞4月10日)

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